「蒼天の拳」

蒼天の拳 (1) (Bunch comics)

そんで北斗の拳の続編というか、姉妹編という感じの漫画を読み始めました。数年前、「コミックバンチ」創刊時にそういう漫画が始まるとは知っていたものの、当時の私には「シティーハンター」の続編という振れこみだった「エンジェルハート」の方が大問題で、超ドキドキしながら見てみたら香が死んでて尻から全身の力が抜けて以降2度と近寄らないようになってしまっていました。関係ないけど、エンジェルハートの方は「続編じゃなくて、パラレルものとして読んでね」的な感じになったらしいですね。大人って奴は!
そんなこんなで再会した「蒼天の拳」ですけど、これが予想外の面白さです。
時代は「北斗の拳」のケンシロウが生まれる一世代前、まだ戦争で滅びる(199X年)前の1930年代の上海を舞台にした、リュウケンケンシロウの師父)の兄である、北斗神拳伝承者・「拳志郎」の物語です。第1話において、リュウケンケンシロウの誕生に立ち会っていて、「え…?ケンシロウってリュウケンの傍で生まれたっけ…?」ってなりますがその辺は考えるんじゃない、感じるんだ!の精神で乗り切ってください。
上海の組織(日本で言うヤクザ)・「青幇」の親分と親友だった拳志郎は、親友のために対抗勢力「紅華会」の幹部を皆殺しにし、日本に戻り身を隠す。数年後、教師をしていた拳志郎の元にやってきた上海時代の仲間の口から、青幇が紅華会によって潰されたと聞かされる。親友のみならず、拳志郎の恋人でもあったその妹も殺されたと知り、拳志郎は復讐のために再び上海に渡る―。といった感じの話なんですけどよくわからないよという人は読んで理解してください。1巻はアマゾンのマーケットプレイスで1円になっていました。1円て。
ストーリー本筋はあいかわらず劇画シリアス風味なんですけど、敵キャラが尋常じゃないおかしさで、その「おかしさ」自体は北斗の拳時代からあったものの、その頃はまだ「これは笑いを狙ってやってるのか恐怖を狙ってやってるのか…?」がはっきり判断出来なくて、そのわけのわからなさが怖ええ…といった感じだったのが、ここにきて原先生は完全に笑いを取りに来てるので安心して笑えます。劇画ギャグです。いまだかつてない彫りの深いギャグ。ということで、以下、印象的な敵の特徴を書いておきますね。

黄西飛

  • 拳志郎に襲われた傷のため、左半身のほとんどが機械。動くたびに「あ!」「い!」「た!」と奇声。
  • 自ら教会を作り、「第3夫人の芳蘭のやつが浮気をしたんで相手の男を川に沈めてやりました」「芳蘭もついつい撃ち殺してしちまいました。あはは」と懺悔。金を積んで司祭に赦しを請い、「よかったぁー。イエス様ってのは本当にありがたい。懺悔すれば全ては許されちゃうんだから」「これでバンバン人殺しができる。バァンバァン」とご満悦。

  • 同じく拳志郎に襲われため、右手がカマ状の義手に。
  • 新調したマシンガン型の義手に付け替えた直後、はしゃいで発射したところ跳弾で部屋中の部下を皆殺しに。「どぅわぁ!当たっちゃってる!」とびっくりするも、次の瞬間には「閻王(拳志郎)め。あいつのせいだ」「皆の仇は俺が取ってやる」と責任転嫁。

呉東来

  • 同じく拳志郎に襲われた傷のため、電動車椅子に乗っており、背骨〜首の骨を機械で代用。一度伏せてしまうと自力で頭を持ち上げられないため、わき腹についたハンドルで機械を巻き上げ、頭を引っ張り上げる。
  • 食事中(顔を皿に埋めての犬食い)ハンドルから手を滑らせ、スープに顔をつけて溺れかけたりする危うさで、まわりからは「首が落ちてるぞ。キコキコしてやれ」と気遣われる。
  • 拳志郎の名を耳にする度に、恐怖のあまり乱心。即座に子分に向かって「たすけてたすけてたすけてけてえぇぇぇぇ!」と銃を乱射。
  • 字が書けないため、記帳を求められ動転。筆を上下逆さまに握り、「何かのおまじないかしら…」と怯えられる。

田学芳

  • 通称「カッパハゲの田」
  • ハゲを気にするあまり、頭に直接ボルトを埋め込み、鉄のカツラを装着。
  • その重さを支えきれず、あちこちで頭を強打。本人は「こんな時でも一糸乱れない。ヅレないのだ」「どんな突風や湿気、雨でも悩まされる事は二度とない!」と満足げ。
  • 本人は周囲にバレているとは思っておらず、ヅラを凝視してくる相手は、「人の目を見て話さない奴は信用できない」と射殺。
  • 拳志郎にヅラを指摘され、「のせてないのせてない何ものせてなぁ〜い!」と手榴弾連投。
  • 「かつて浴場は危険に満ちた場所であった」「みんなとの風呂は時間をヅラして入ったり…ヅラだけに!」とジョークを交えつつ思い出語り。
  • 風呂に沈められるもヅラの重さで起き上がる事が出来ず、溺死。

張太炎

  • あだ名は「花嫁泥棒の張」無類の女好き。登場2ページ目にして、回春剤を握り締め、「これ一粒で男根は剛槍と化すのだぁ!」と放送禁止用語を口走りながら猫型ロボット風に紹介。
  • 女を囲い込み、船が立て揺れする勢いでセックス。気絶した女は船から放り投げる。

章列山

  • 普通の人間の10倍サイズ。人の遠近感を失わせるレベルのデカさ。
  • 「おれは大きくない。普通だよ」「大きいと言われるのが大嫌いなのだ」「おれに大きさを感じさせるな!」とワガママ。身の回りのもの全てを自分に合わせたサイズに作り直させる。(逆らった人間は即死)
  • 馬に乗るもサイズがあわず、「これ犬!?」「こんな小さい馬なんているはずがない」と恫喝。怯えた部下が象を用意するが、「こんなデカい馬いるか!?」「これは象だろボケ」と射殺。
  • 好みは小柄な女。「意外とアレは普通なのよ」との事。

羅虎城

  • 普通の人間の1/2〜1/3サイズ。あまりに小さいため人に気づかれない。
  • 声の大きさで相手を威嚇し、髭で人の気配を感じる。
  • 部下に「自分より目立つな」と指示し、腰を屈めて歩かせる。自分より小さい人間を見つけると、「お前、小さいなあ〜!」とはしゃぐ。

その他、フランス人は「ザンス」・上海の商界理事は「ダス」・中国人は「アル」・ナチスは「リッヒ」と「イッヒ」・フランス人は「ソワ〜」と「シュール」を語尾につけて話す特徴があったりして色々驚かされる事が多いので皆読めばいいと思うリッヒ。