「後巷説百物語」

後巷説百物語 (Kwai books)

御行の又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平ら小悪党たちの暗躍を描いた人気シリーズの第3弾。幕末を舞台とした先の2作とは異なり、時代は明治へと移り変わっている。年老いた主人公、山岡百介が、数十年前に又市らによって仕組まれた事件を振り返るという趣向だ。奇怪なしきたりに縛られた孤島、死人が放つ怪火、不死の蛇、人へと変化する青鷺など、著者が得意とする妖怪を題材にした6編が収録されている。第130回直木賞受賞作。

面白かったー。久しぶりにわくわくしながら読みました。「ずっと終わらなきゃいいのになあ」なんて思ったのもすごく久しぶりです。(いつもは「早く結末を…!」っていう感じで読む)
前作の「続巷説」の方は何となく重いわあ…っていう感じで読んでいてしんどさの方が勝ってたんですけど、これは「百介が自らの体験を語って聞かせる」形式のせいもあってか、するする飲み込めました。巷説シリーズは必殺仕事人に例えられる事が多いですけど、やっぱり私は、「ラストで間違いなくきちんと落としてくれる」ものが好きなんだなあとしみじみ思いました。そりゃ毎日「暴れん坊将軍(再」を楽しみにしてるわけですよね。ちなみに今日楽しみなのは「全国警察犯罪捜査網」です。
又市たちの生きる「あちら側」に行けなかった事を寂しく思う百介と、同じく置いていかれた立場の私(読者)としては、百介の語りを聞きながらも、いつも心の隅の辺りに「ああ、もう又市はいないんだな」という思いがあって、こっちも何だか「楽しいんだけど、どこか寂しい」気持ちになります。語られている事が全部「思い出」・「過去」になっちゃってるからだろうなあ。
その他、80過ぎてもいまだに又市を恋しく思っている百介ハァハァ…!っていう味わい方も出来ます。出来たからどうしろっていうんだというのは自分で考えてください。ゲイ雑誌のお相手募集コーナーに70代男性の投稿が載っていたという話を聞いて以来、色んなものを許容出来るようになりました。大人になるって、こういう事でしたっけ。
所々で京極シリーズとリンクしているものもあって、それを見つけるたびにムッハー。というか、「狂骨」との繋がりにびっくりした。又市ひでえ。