西尾維新

クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子 (講談社ノベルス)

「紫木一姫(ゆかりきいちひめ)って生徒を学園から救い出すのが、今回のあたしのお仕事」
「救い出すって……まるで学園がその娘を拘禁してるみたいな言い方ですね」
人類最強の請負人哀川潤から舞い込んだ奇妙な依頼に従って私立澄百合(すみゆり)学園、またの名を《首吊高校(クビツリハイスクール)》に潜入した「ぼく」こと“戯言遣いいーちゃん”は恐るべき殺戮の嵐に巻き込まれる――。

戯言まみれ。
ライトノベルの基準が全く分からなかったので、萌え狙いキャラのひしめき具合にこめかみを痛めつつ、これまで西尾維新ライトノベルの箱に入れるべきかミステリの箱に入れるべきか決めあぐねていたのですが、この本を読んで迷う事なくライトノベル箱にドーン!と叩き込む事が出来て、そういう意味ではとてもスッキリしました。ライトノベル判断の理由は、18〜9(?)の男が「いきなり渡された女子高生の制服を着て学校に潜入することに!正面玄関からごく自然に入れちゃったよ☆」をやらかしているからです。スネ毛とヒゲと喉仏を無視する世界=ライトノベルと判断しました。
内容ですけど、どうも次の作品へのネタフリみたいな部分が大きそうですね。戦う制服美少女達の物語ですって言ってもあながち間違っちゃいないような気がします。主人公の本名が明かされてないっていう事にこの作品を読むまで全く気づきませんでした。「僕の本名を知った人は不幸な目にあうんだ」的な事を言ってるんですけど、普通に学校(大学)に在籍してるくせに何言ってんだろう…と思わずにいられないのはあなたが捻くれているからですよ!
主人公の行動原理について、相変わらず言葉をこねくり回して正当化してるんですけど、どう考えても必要のない理由で必要の無い方向に動いていて、それを「主人公はそういう(場を乱す)資質がある」的な書き方をしているものの、主人公のせいで乱れたというより乱すために主人公を動かしてる風にしか見えなかった(主人公の理屈に納得できなかった)のが1番ダメだったかなあ。何でも完璧にやりとげてしまうキャラ(哀川)と主人公を離さない事には話が面白くならないし戦う美少女の魅力も半減だし…っていうのはわかるんですけどね。
そんでまああからさまな萌え狙いのキャラとか、薄ら寒いギャグとか、毎回必ず主人公の内面を批判するようなキャラや台詞を用意して「そうだよ、こういうとこが悪いんだよね、わかってるよ」の免罪符にしようとしてそうなとことか、毎回毎回最後に哀川にベラベラ喋らせて補完するところとか、何より主人公の人間性が全く好きになれないのですが、何で読んでるかというと、「いーちゃん(主人公)」が、思春期なら誰もが持つであろう思考や感情を過剰に垂れ流してその上そんな自分を皮肉れるような視点もありますよみたいな事も言うんだけどそれもひっくるめて「普通」の人間のくせに、一体何をそんなに大層ぶってるのか?の答えが知りたいからです。「僕過去に何かあったんです」「やっちゃったんです」な感じをシリーズ全編を通してチラチラチラチラ匂わせやがってこのチラリズム野郎が!とっとと脱いでボロンと見せんか!ムッキー!と思いながら読んでたんですけど、なんかもう追うのもしんどいなあっていうか西尾の思う壺だなあと思えてきたのでそのうちシリーズの最終章(ネコソギラジカル?)だけ読もうかなあ…そんでプリプリ怒ろうかなあ…。どんなラストでも私は確実にプリプリ怒るであろう自信があります。というかむしろそのために読もうとしてる感すらあるのですいません。とりあえず謝っておけばいいか、っていう姿勢はどうかと思います。