「ダレカガナカニイル」

ダレカガナカニイル… (講談社文庫)

警備員の西岡は、新興宗教団体を過激な反対運動から護る仕事に就いた。だが着任当夜、監視カメラの目の前で道場が出火、教祖が死を遂げる。それ以来、彼の頭で他人の声がしはじめた。“ここはどこ?あなたはだれ?”と訴える声の正体は何なのか?

こういうSFめいたというか超常現象をネタにしたミステリっていうのは、その現象をどうやって読者に納得させられるか(もしくは納得したような気分にさせられるか)っていう所が一番重要で、「もっと上手く騙してくれよー」と思う事が多いので構えていたんですが、思ったよりスルっと飲み込めました。途中ちょっとダレるとこもあって、「これ削っても良くね?」と思ったりもしたんですけど、納得させるためには書きすぎるくらい書いた方がいいのかなあ。
昨日↓のサイトを読んだばかりだったせいで、最初は精神科医の理屈の方に持ってかれそうになりました。こんな(主人公と同じような)状態になったら私は1日ともたずに自分で頭蓋骨割ろうとしちゃいそうな気がします。自意識だけでも十分持てあましてんのにこれ以上ややこしいもんを入れる余裕はねえ…!

以下ネタばれ。

「これって何かの伏線?」と思ってたとこが特に何の伏線でも無かったりした所がちょっと残念。
あと6割くらいが「あたしどうしちゃったの?」「あたしの声を聞いて」「あたしあたし」→「うるさい黙れ」「俺は気が狂ったんだ」で占められていて、読んでるうちにこっちが「ああもううるさい黙れ…!」って本を放り投げたい衝動に駆られますが大人なので我慢しました。
ラストはびっくりする気持ちと、飲み込み辛い気持ちとが半々くらいでしたがびっくりの方が勝ったのでよし。メビウスの輪に巻き込まれちゃったぽい気持ち悪さですね。
彼女(読んだのは数時間前なのに早くも名前を忘れました!)の理屈を信じて読むのが正しいんでしょうけど、精神科医(同じく忘れました!)の理屈をまるっと信じてそっちの視点から読んでみたらかなり背筋がゾクっとする話になるような気がしました。脳内恋愛!セルフ完結!