西尾維新

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)

鴉の濡れ羽島で起こった密室殺人事件から2週間。「ぼく」こと戯言遣いいーちゃんが、級友・葵井巫女子とその仲間たちと送る日常は、人間失格・零崎人識との出会いによって脆く崩れ去っていく…。

主人公(いーちゃん)をどう受け止めるかによって「面白!」となるか「キモ!」となるかに物凄い勢いで分かれそう。思春期暴走少年。
主人公の持ってる巨大な虚無感とか疎外感・離人感とか、多分誰しも一度は思うような事なんでしょうけど、主人公はそれを通過しきれず立ち止まって世界(世界て)を静観している。その根本として、「過去に何かあっちゃったんです」な感じを漂わせつつ、それが何なのかは相変わらず書いてないので想像する他無いのがモヤモヤすんなあ。すげえ自意識くん。
「人を殺す心理」「死ぬとはどういう事か」「成す事のない"終わってしまった"世界に生きる苦痛」みたいなものが延々と延々と延々と書かれているのでしんどいです。「あああああ!お前はもう!!脳みそ半分くらい捨てろ!」って髪の毛引っ掴んで揺すぶりたくなります。西尾さんは言葉で韻を踏んだり気に入った言い回しを多用するんでそれもまたしんどい。さんざ澱み偏った思考を垂れ流して、事あるごとに「戯言だよな…」と呟いて締められると、何の免罪符なんだよその台詞!と思ってしまう。作中で一体何回くらい言ってんだろうあの台詞。
まあ私がこんなにも主人公に身悶えしてしまうのは私も彼と同程度の自意識(テンコモリ)と青々しさを持っているからなんでしょうけども。私もう24。死にたい。でもどっちかというと最初に殺されちゃった子の方に近そうでもある。
主人公のメンタリティが話全体に作用してるもんで切り離せないのですが、ミステリとしては面白かったと思います。ちょっと反則的ではありますが。上にダラダラ書いたような主人公に拒否反応が出ない人にはオススメ。
あと「X/Y」はわかんねえよ!実際に書いて携帯で写真とって反転させて回転させた女がここにいるよ!答えを教えてくれたのはインターネットさんでした。
−−−−以下、ネタバレブツブツ−−−−

最後の「甘えるな」は好きです。あれはほんとにそう思う。「クビシメロマンチスト」って巫女子(拳を握りたくなるような名前ですね!)さんの事なのかなあ。あの状況で「助けて欲しかった」はな。
だからといって主人公のした事が正しいとは思いませんけど。「甘えるな」もお前が言えんのかって話ですし。「どっちでもよかった」んだろうなあホントに。そこがまた主人公のキモさ。
主人公への嫌悪感は、ラストの潤さんの登場で多少なりとも溜飲を下げるしかないのかなー。