岩井志麻子「恋愛詐欺師」

どこかが欠けた女の人達の短編集。
だんだん「暗さ」といか「重さ」というかそういうものが薄くなってるような気がするのは気のせいか。
この中の一編で、不注意で焦がしてしまった化粧ポーチを繕って大事に使っている女の人が登場するのですが

「例えは悪いかもしれないけど、どこかに問題や障害のある恋人とかを持った人の気持ちって、これなんじゃないかな。多分このポーチに何事もなかったらあたし、他のポーチと一緒ですぐ飽きてしまいこむか無くすか誰かにあげるかしてたと思う」
(略)
「欠損したものって、人には簡単にあげられないし、忘れられないですよね。それにほら、『これをこんなふうにしてしまったのは自分だ』って負い目みたいなもんが産まれるから、余計に意地になって『ううん、これはすばらしいもの(略)』って言い張れるじゃないですか」
『酷薄な天国』

というセリフが印象的でした。なるほど。
あとは面白かったというかシンクロしたのは『罰当たりの花園』に出てくるデブスで自己評価の低い女の人とか。うん、笑えない。