「フラワー・オブ・ライフ」

フラワー・オブ・ライフ (2) (Wings comics)

白血病の治療を終えて、一年遅れで高校に入学した主人公の学校生活をオタク臭をたっぷり振りかけて描いた漫画ですとか言うとものすごく偏って見えますね。オタクといっても秋葉原系じゃなくて、何というか、「女のオタク」寄り。ニュアンスをどう伝えていいのかわからない。
「1巻よりさらにおもしろい」の謳い文句は間違いじゃなくて、私もそのとおりだとは思ったのですが、この漫画を諸手をあげて「おもしろーい!」と言えるのは、オタクゾーンにほとんど足を突っ込んでいない人と、オタクゾーンのど真ん中で水浴びしてるような人なんじゃないかという気がしてたまりません。
どう言っていいのかわかりませんが、例えば電車の中で、チェックのシャツにケミカルウォッシュのジーパン履いてバンダナと指先の無い皮の手袋(黒)を装備して「おいおいそれは聞き捨てなりませんぞー!?」なんてキャッキャとはしゃいでいる人たちを見た時、「何あれー!ププー!」となる人は普通の(オタク世界とは無縁な)人、「うわあほんとにあんな奴いるんだ」「これぞオタクって感じ(笑」「イタいけどそのイタさが面白い」的な受け止め方をする人はオタクどっぷりな人で、その中間あたりに位置している人は、「私は彼を笑えない」という思いがあるというか、そういう人を笑うということは、程度の差こそあれ彼と同じライン(オタク)上にいる自分自身を笑う事になるわけで、はしゃぐ彼らを横目に何ともいたたまれない気分を味わう事になるんじゃないかと思うのです。書いてみると、オタク度合いというか自意識の問題のような気もしてきましたけど、どっぷりハマっている時はまわりのテンションとあいまって自意識がポーンと飛びがちなとこがあると思うので。
で、この「フラワー・オブ・ライフ」は、オタクの人の「そのイタさが面白い」的な描き方をしてるところがちょこちょこあって、同人誌やコミケ絡みのネタもふんだんで「おもしろいんだけどでも…!」みたいな心にチクチクくるもんがあって、楽しんでいいんだか悪いんだか、これは私自身がまだ「自分のオタクぶり」と折り合いをつけられていないということのような気もします。悩む。
読んでて「あー。こりゃオタクぽい女のツボだろうな」と思ったとこが、真島くん(表紙の黒髪)の演劇シーン。「普段はオタクで陰気で性格悪い男の子」が「クラスの演劇で色男役をやる事になったところ(メガネを取ったら男前)、キザな台詞を躊躇無く吐いたり笑顔を見せたり女の子とのキスシーンもサラっとこなしちゃったりで大活躍」って。なあ!私があと5年若かったら「うおー!」って言ってたとこですよ!(5年前って20ですよね。成人してもそれなんですか)(うん)
よしながさんはそういうの全部わかってて描いてるんだろうなあ。

ボーイズラブ好きの女どもは男同士の関係の潜在的な対等性に無意識に萌えてるんだ!受はあくまでももともとは受*1でも功*2も選べる男でありながらあえて受を選択しているのであってそもそも体の構造的に受動的な女とは根本的に違う!」
「ならどうして(受を)可愛く描かなくちゃいけないわけ!?」
「読者は基本的に受に感情移入するものなんだ!だから女ではないが女に近い生き物として受を描かないと読者が受に共感できんだろうが!」
(教室のど真ん中で真島くんが女の子にボーイズラブとはを説く)

というやりとりに笑える人なら楽しめるんじゃないかなあと思います。(ちなみに私は気持ちの整理がつきませんでした!未熟!)
あとオタク云々を抜きにした、友情模様・家族模様とかは見てて無条件に面白いです。滋さんの不倫についてはどう説明つけるんだろうなあとずっと思ってたんですけど、こう転がすのか!にびっくりさせられました。あれだけは予想外だった。
オマケで載ってたかぼちゃのケーキが美味そう。だけど私にはオーブンがない。というわけでレシピだけ書いておきましたので(g:cooking:id:furamubon:20050527#p2)興味がある方はどうぞ。

  • 【追記】

1巻を読んだ時の感想があった。id:furamubon:20040501#p1

*1:掘られる側

*2:掘る側