「ニシノユキヒコの恋と冒険」
川上弘美「ニシノユキヒコの恋と冒険」
何でもそつなくこなせ、女にもモテる。そんな男「ニシノユキヒコ」に恋をした女達を描いた短編集。
主人公ニシノユキヒコは、どんな女と付き合っても最終的には振られてしまう。「人を愛することができない」ニシノユキヒコに、女達は悲しんだり、怒ったり、苦しんだり。そして彼と距離を置く事になる。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
「人を愛する」って何なんだろうなあとぼんやり考えさせられる。
ニシノくんは、彼自身「人を愛したい」と痛切に思っている(ように見える)けれども、そう思っているが故に、それがどういう事なのかわからなくて、人を愛するのが怖くて、愛にまで踏み込まない場所(恋)で止まってしまう。「永遠に手に入らないままの状態で存在し続けるもの」を欲していたように見える。
愛に限らず何でもそうだと思うのですが、「愛するって何だろう」「本当に愛しているのか」というような事をとことんまで突き詰めて考えると、「何だかわからない」「愛していないんじゃないか」という結論が出てしまうに決まっていて、「考えるんじゃない!感じるんだ!」という言葉が浮かびそうになるのですけども。
読み終えて、ニシノくんは多分、関わった全ての女の人に愛を分散させていたんじゃないかなあと思った。1人にドーン!じゃなくて、「この愛はこの人に」「この愛はこっちの人に」みたいな。
三千万年後には、このあたりは暗闇のない世界になるんですよ。一体どうしたらいいんでしょう、あたしは。ねえ、どうしたらいいんでしょう。
「ぶどう」より
「さみしい」という言葉がよく似合う小説。